オルカンとS&Pはほぼ連動している

S&P500とオルカン、どちらにしようか迷っていて、その二つを例えば半分ずつ持つような意見をしばしば見かけます。 しかし、S&P500とオルカンを持っているのに、米国株が下がった月はどちらも下がることがあります。 本記事では米国株への集中を薄める目的でS&P500にオルカンを足しても、狙った分散になりにくいということを数値と計算で示します。

S&P500は米国の代表的な株価指数で、米国企業500銘柄を時価総額で加重する設計です。1 月次レポートの「実質外国株式比率」は100.0%でした。1 この100.0%は日本の投信レポート上の「外国株式」という資産分類です。 S&P500の指数ルールは米国企業の普通株を対象とし、ADRは対象外なので米国比率100%です。2 運用会社も、このファンドの主な投資対象をS&P500採用の米国株と説明しています。3

本記事では、S&P500連動部分の米国企業への投資対象を100%と置いて、米国比率を計算します。 オルカンは日本を含む先進国・新興国の株式へ投資しますが、同日の米国比率は63.1%でした。4 オルカンとS&P500を金額ベースで50:50にした場合、米国比率は50% × 100% + 50% × 63.1% = 81.55%、約81.6%です。 二つを組み合わせても米国株への偏りが大きく残ることがわかります。

違う商品名でも、同じ会社の株式が上位に並ぶ

2026年7月31日現在、S&P500の上位5銘柄はApple、NVIDIA、Microsoft、Amazon、Alphabet Class Aで、合計比率は26.7%でした。1 同日のオルカンも上位5銘柄がこの5社で、合計比率は16.4%でした。4 オルカンにも米国大型株の比重が残ります。

では、全部が同じかというとそういうわけではありません。 S&P500の組入銘柄数は503銘柄、オルカンは2,414銘柄で、銘柄数も比率も異なります。1 4 上位5銘柄が重なっていることは、構成上の共通点です。 実際に値動きがどれほど重なったかは、次の月次リターン相関で確認します。

月次リターンの相関は0.98だった

実際の基準価額の月次リターンを同じ期間で比べました。 相関係数は、二つの月次リターンが同じ方向へ動いた程度を−1から+1で表す数値です。 +1に近いほど同じ方向へ動き、0に近いほど同じ方向・逆方向への動きが弱く、−1に近いほど逆方向に動くと読みます。 S&P500とオルカンの0.98とは異なり、組み合わせる相手と期間で月次リターンの重なり方は変わります。

各月の最後に公表された値で単純リターンを作り、相関を計算しました。5 2026年8月9日時点で取得できた最終データ月は2026年7月です。 2023年8月から2026年7月までの36か月では、S&P500とオルカンの相関は0.981361…、表示値で0.98でした。 2021年8月から2026年7月までの60か月でも、相関は0.979006…、表示値で0.98でした。

上三角が3年、下三角が5年の相関です。 同じペアの期間を変えても月次リターンの相関が0.98前後だったことは、指定期間に両商品の値動きが強く同方向だったということです。 米国比率と上位銘柄の重複を合わせると、今回の目的では米国大型株の集中を薄める効果が限定的だと判断できます。

eMAXIS Slim 全商品の月次リターン相関

価格水準ではなく、公表基準価額から算出した過去の月次リターンが同じ方向へ動いた度合いを比較します。

  • 上三角:3年相関
  • 下三角:5年相関
  • 色尺度:−1.00(逆方向)〜 0.00(中立)〜 1.00(同方向)

相関分析表

縦横にスクロールできます。セルを選んで、矢印キーでセルを選択できます。選択したセルの詳細情報が下に表示されます。

行の商品と列の商品の月次リターン相関。上三角は3年、下三角は5年。
行\列上:3年/下:5年国内株先進株米国株新興株全世界株国内債先進債国内REIT先進REITバランス
TOPIX日経平均先進国株式除日S&P500新興国株式3地域均等オルカン全世界除日国内債券先進国債券国内REIT先進国REIT8資産均等
TOPIX
日経平均
先進国株式除日
S&P500
新興国株式
3地域均等
オルカン
全世界除日
国内債券
先進国債券
国内REIT
先進国REIT
8資産均等

選択中の組み合わせ

行
国内株式:eMAXIS Slim 国内株式(TOPIX)
列
国内株式:eMAXIS Slim 国内株式(TOPIX)
期間
自己相関
相関
1.00

相関0.98は、毎月必ず同じ幅で下がることや、上位銘柄が下落の原因だったことを示しません。 ここで確認できるのは、指定期間の月次リターンの共動きです。

低相関だった組み合わせを読む

今回の表で、S&P500と国内債券・国内REITの相関は3年ではともに0.17、5年では0.25と0.39でした。5 オルカンとの組み合わせも国内債券・国内REITの相関が3年ではともに0.22、5年では0.26と0.43でした。5 国内債券は国内金利と債券価格、REITは不動産市況と金利、株式は企業業績や市場価格の影響を受けるため、低相関でもリスクの種類まで同じになるわけではありません。6

日経平均はsnapshotに含まれ、S&P500との相関は3年0.70・5年0.69、オルカンとの相関は3年0.77・5年0.76でした。5 新興国株式ではS&P500との相関が3年0.72・5年0.61、オルカンとの相関が3年0.81・5年0.73で、いずれも0.98より低い値でした。5 三地域均等が良いのかもしれないという考え方は次の比較候補ですが、今回の相関表ではその配分の相関やリスクを計算しておらず、良し悪しは結論づけられません。

これらの相関値は過去の固定snapshotで観測したものであり、将来も低相関が続くことや損失を避けられることを保証しません。

金融庁は、国内外の株式・債券・不動産など値動きの異なる複数資産への分散で価格変動をある程度抑える考え方を説明しています。7

まとめ

S&P500とオルカンを50:50で持つと、表示値をもとにした米国比率は約81.6%残ります。 上位5銘柄が重なり、月次リターン相関も3年・5年とも0.98でした。 一方、S&P500/オルカンと国内債券・国内REITの相関は0.17〜0.43で、組み合わせる相手と期間によって重なり方は変わります。 したがって「意味がない」は文字どおり分散がゼロという意味ではなく、米国大型株の集中を薄める目的ではオルカン追加の効果が弱い、という意味です。

脚注

  1. 三菱UFJ銀行「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)月次レポート(2026年7月31日現在)」 — 実質外国株式比率、上位銘柄、組入銘柄数、S&P500の投資対象を確認しました。 ↩ ↩2 ↩3 ↩4

  2. S&P Dow Jones Indices「S&P U.S. Indices Methodology」 — S&P500の米国企業・普通株・ADRの適格性を確認し、日本の月次レポートの「実質外国株式比率」と計算上の米国比率の区別は同レポートと併せて確認しました。 ↩

  3. 三菱UFJアセットマネジメント「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)は、S&P500指数への連動を目指すETFに投資しているのですか。」 — 同ファンドの主な投資対象がS&P500採用の米国株であることを確認しました。 ↩

  4. 三菱UFJ銀行「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)月次レポート(2026年7月31日現在)」 — 米国比率、上位銘柄、組入銘柄数、投資対象地域を確認しました。 ↩ ↩2 ↩3

  5. 三菱UFJアセットマネジメント「投信情報API」 — 基準価額履歴の出典です。 ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5

  6. 三菱UFJアセットマネジメント「eMAXIS Slim」 — 株式・リートの価格変動、債券の金利変動、為替変動が基準価額に影響するというリスク説明を参照しました。 ↩

  7. 金融庁「資産形成の基本」 — 値動きの異なる資産への分散と価格変動の説明を参照しました。 ↩